東京ひとり時間

無趣味だったアラ50主婦。「ひとり時間」を楽しんでいる内に充実した日々を送れるようになってきました。そんな日々の記録です。

【読書記録】『迷宮の月』安部龍太郎著

こんばんは!

都内在住アラフィフ主婦のnicoです。

ひとり時間を楽しんでいます。

 

安部龍太郎氏による

古代史四部作」の一つ、

迷宮の月』読了。

 

※古代史四部作はこちら

 

663年、

白村江の戦いで大敗した日本は

朝鮮半島から撤退。

 

唐との外交関係をどう立て直すか

という問題に直面しましたが、

669年の遣唐使を最後に約40年間、

唐との国交が途絶えていました。

 

701年、

朝廷一の実力者であった

藤原不比等

遣唐使船の復活を決断

 

日本と唐の国交回復に向けた

重要な使節だったため、

通常の大使と副使の上に

執節使(しっせつし)」という

特別な職も置かれました。

 

その「執節使」には

長安への留学経験もあり、

対唐外交の権威であった63歳の

粟田真人(あわたのまひと)が

任じられました。

 

真人に託されたのは

使節団にも打ち明けられない

密命を帯びた任務。

 

様々な困難が立ちはだかる中、

国のために命を懸けて立ち向かう

遣唐使の姿が描かれています。

 

↓↓↓以下ネタバレあり↓↓↓

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白村江の戦い後、

天智天皇の御世では

滅亡した百済の再興を目指していましたが、

天武天皇の御世になると、

方針を変えて唐との国交回復

目指すようになりました。

 

唐との国交断絶が続けば、

日本は外交的に孤立し、

唐の優れた制度や文化を

導入することができず、

ますます世界の趨勢から遅れていくとの

考えからでした。

 

天智派と天武派の激しい対立の中、

天武天皇のご遺志を継いで

藤原不比等遣唐使の派遣を強行しますが、

もし唐との交渉に失敗すれば、

天智派が勢いづき、

真人だけでなく不比等も粛清され、

不比等の考えに同意した文武天皇

お立場まで危うくなりかねない状況でした。

 

重責が真人の肩に重くのしかかります。

 

しかも最大の問題は、

唐の皇帝と日本の天皇の関係を

どう位置付けるか

 

唐では天子(皇帝)は天命を受けて、

自国だけでなく周辺諸国をも支配し

教化しなければならないという

中華思想があるため、

冊封(さくほう)体制によって

四夷を従属させることで、

東アジアの秩序を保っていました。

 

しかし、

日本の天皇が唐の皇帝の臣下となれば、

天皇の絶対性が崩れて国を統べる

大義名分を失うことになるため、

日本の朝廷は

そのまま受け入れるわけにはいかず、

あくまで対等だという立場

崩すわけにはいきませんでした。

 

聖徳太子が隋に送った国書

「日出ずる処の天子…」と

同じ理由です。

 

なので、

不比等が真人に授けた密命とは

唐には臣下の礼を取るが、

国内では対等な関係だと言い張る

二重基準を用いるために、

唐にも日本の立場を理解してもらい、

皇帝が下賜する国書には対等な

文言を書いてもらうということでした。

 

しかし、

この特例が他国に知れ渡れば、

皇帝の絶対性と公平性も保てなくなるため、

唐がこの密約に応じる可能性は低く、

難しい交渉となることが予想されました。

 

しかも、

唐では皇帝が高宗陛下から

則天武后に変わっており、

女帝を相手に

交渉を進めなければならなくなりました。

 

武后は独裁体制を築き、

密告を奨励したり、

政権批判する者を摘発して

拷問の末に罪に落とすような非道な行為を

公然と行っていました。

 

真人はその武后に会うことさえも

ままならない状態が続きます。

 

しかしある時、

真人は武后政権の秘密に気づき、

それを現状打破の秘策にすることを

思いつきます。

 

また武后政権では

武后に従って立身するため

今の体制を守り抜きたい

武后派」と

御世を改め李氏の朝廷に復するべきとする

復唐派」との対立もありました。

 

まず真人は武后の側近である杜嗣先に

秘密を知っていることを匂わしますが、

投獄され拷問を受けてしまいます。

 

しかし、

それをきっかけに杜嗣先との交渉が叶い、

武后派にとっては大きな懸念材料だった

復唐派との和解を真人が担うことで、

真人の密命は果たされていくのでした。

 

新羅との関係悪化により、

従来の朝鮮半島沿いに進む「北航路」が取れず、

危険の大きい未知の航路「南航路」で

進まなければならないところから始まって、

海賊に襲われたり、

拷問にかけられたり、

命の危険に身をさらしながら任務を全うする

遣唐使の覚悟が感じられる作品でした。

 

 

最後までお読みいただき、

ありがとうございました!

 

安部龍太郎氏の古代史四部作●

(↓ 時代順)

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