東京ひとり時間

無趣味だったアラ50主婦。「ひとり時間」を楽しんでいる内に充実した日々を送れるようになってきました。そんな日々の記録です。

【読書記録】『等伯』安部龍太郎著

こんばんは!

都内在住アラフィフ主婦のnicoです。

ひとり時間を楽しんでいます。

 

先日、狩野永徳を題材にした

作品を読んで、

同時代に活躍してその作品にも登場した

長谷川等伯が気になりました。

 

狩野永徳を題材にした小説は下記2つになります。
●『洛中洛外画狂伝 狩野永徳
●『安土唐獅子画狂伝 狩野永徳

 

どうせなら二人が活躍した

安土桃山時代を美術の視点で

もう少し理解したいと思い、

安部龍太郎著、

等伯』を手に取りました。

 

等伯を詳しく知らなくても、

水墨画で描かれた

圧倒的な存在感を放つ

松林図屏風」は

見たことがある人も

多いのではないでしょうか。

 

本書は直木賞の受賞作品で

上下巻に分かれた長編ですが、

能登の絵仏師だった等伯

天下一を目指すべく上京し、

「松林図屏風」に辿り着くまでの

波乱万丈な人生が描かれており、

最初から最後まで引き込まれるように

読み進めることができました。

 


1539年、

等伯能登七尾で畠山家に仕える

武士の家の四男として生まれました。

 

10歳で絵師の長谷川家に養子に出され、

地元で絵仏師として名声を得ます。

 

しかし、京の都で天下一の絵師になる

という野望も持っていました。

 

やがて武士の生家を継いだ長兄を通して、

その野望を叶えるべく歩み始めると同時に

戦乱にも巻き込まれていきます。

 

戦国時代の人々にとって人の生死は

今よりもずっと身近だったと思うので、

現代人の私が想像しようとしても

難しいのですが、

これでもか!という位、

身内に不幸が続くし、

時代に振り回されるし、

等伯の人生は苦難に満ち溢れていました。

 

それでも筆だけは離さず、

絵師としての道を歩み続けます。

 

そして、千利休豊臣秀吉

重用されるようになり、

当時の一大ブランドであった狩野派をも

脅かす存在になって行きます。

 

本書では等伯の進む道は

法華経を中心とする仏教の教えとも

リンクされており、

悟りの境地で描かれた

代表作「松林図屏風」に

辿り着くまでの等伯の心理描写も

興味深く感じました。

 

著者はこの作品を描くにあたって、

等伯ゆかりの地で

取材を行うことはもちろんのこと、

美術史や法華経の専門家などに教えを請い、

理解を深めていかれたそうで、

作品自体に何層にも重ねられた

重厚感のようなものを感じました。

 

大変読み応えがありましたし、

挫けそうになっても

本書を思い出してもうひと踏ん張りできそうな

力を与えてくれる作品だと思いました。

 

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